2014年9月16日火曜日

ゼミ旅行 2014

9月14日、15日と、ことしもゼミ旅行で信濃追分の森の家へ行ってきました。総勢15名、現役ゼミ生(3年生)、4年生のゼミ生OB、院生、それに、1日目の講義の講師としてお招きした静岡大学准教授の小町将之さん、明海大学で長期研修中の矢持昌也先生、わたくしという顔ぶれです。

わたくしの慶應義塾大学在職中からの続いているゼミ旅行ですので、日程などについてはおおよその型が出来上がっています。しかし、3連休の後半に組んだ、ことしのゼミ旅行は関越道の渋滞に悩まされました。

学生・院生参加者の多くは高速バスを利用したのですが、往きも帰りも渋滞に巻き込まれました。1
小町さんの講義
日目は2時から小町さん講義の予定だったのですが、一番遅かった組の到着が3時半ごろになってしまったため、小町さんの講義時間は大幅に短縮せざるを得なくなってしまいました。

しかし、小町さんはそんなことに動じることもなく、ことばが持つ楽しさや奥深さをわかりやすい例をたくさん挙げて、説明してくれました。学生・院生と歳が近い講師の話はいろいろな意味で新鮮だったはずです。


講義のあとは、夕食兼呑み会第一部です。森の家の夕食はゼミ旅行バージョンの鉄板焼きです。学生の食欲と健康を考えて、たくさんの肉とこれまたたくさんの新鮮な野菜を用意してくれます。また、ことしは酒呑みが多いことから、矢持先生の指揮の下、日本酒1升、イモ焼酎・麦焼酎各1本に加え、ビール、サングリア、梅酒、果実酒などがずらりと並び、大いに食べて、呑んで、語りました。

そのあとは、花火です。初期のゼミ旅行では、飛ぶ花火、音のする花火なども買ってきたものですが、「森」の中とはいえ、近隣に家がまったくないわけではないので、その方たちに迷惑のかからぬよう、おとなし目の花火を楽しみました。

そのあとは、呑み会第二部です。ここからは自由行動ですので、入浴するもよし、部屋で仲間と語るもよし、ホールで呑みながら過ごすのもよし、です。このゼミ旅行が始まった頃は遅くまで学生たちと語り合い、相手を酔いつぶしてしまうことも稀ではありませんでしたが、心は若くとも、体の衰えはいたしかたないので、無理のないよう、少し早目に休みました。

矢持先生は明け方近くまで学生とつきあってくださったようです。午前4時には目覚めて、仕事をしようかと思っていると、酔い潰れて寝てしまった参加者を学生と一緒に抱きかかえてベッドへ運び込む先生の姿がありました。矢持先生は教頭長期研修2年目ですが、すっかり、大津研究室の顔となり、その運営になくてはならない存在です。今回も多忙を極めるわたくしを気遣い、実質的に司令塔の役割を果たしてくださいました。

庭山の発表
二日目は午前7時45分から朝食です。新鮮な牛乳と珈琲で目をさまし、手作りのパン、新鮮なトマト、レタス、キュウリ、それにオムレツ、もちろん、スープも添えられています。

朝食がすむと、部屋の荷物をかたずけて、帰り支度をした後、ホールに集まり、庭山恵太院生、Joe Tabolt院生の発表を聞きました。庭山は英語学習における動機づけについて、Joe(と普段は呼んでいる)はWill you...?、Can you...?、Would you...?、Could you...?の英語話者の使い分けと日本人英語学習者の使い分けについて、話をしました。

Joe Taboltの発表
いずれも、まだまだ粗削りな状態ではあるのですが、2人とも研鑽の跡が見られ、研究科教員としてうれしく感じました。わたくしは大学院担当の副学長も兼務しており、応用言語学研究科の雰囲気をもっともっとアカデミックなものに変え、大学院本来の研究の場にふさわしいものにしたいと思っています。彼らは応用言語学研究科のこれからを背負って立つ、重要な院生です。今後も周りの雰囲気に流されることなく、研究仲間を明海の内外に求め、大きく成長していってほしい。わたくしはできる限りの支援をしたいと思います。

院生2人の発表が終わったところで、ゼミ旅行の公式行事はすべて終わりました。このゼミ旅行をいろいろな面で支えてくれている森の家のご主人(わたくしの立教大学経済学部学生時代の友人)に全員でお礼を言って、旧中山道ぞいにある「きこり」という蕎麦屋さんへ出かけました。連休中なので、ほぼ開店と同時に15席を確保、信州のおいしいそばを堪能しました。もちろん、そばのおともには日本酒が必要です。そして、その酒のおともにそば味噌焼き、牛すじ煮込み、揚げ出し豆腐、漬け物などが同席します。

おみやげに1合瓶を2本ほど買い求めて、ほろ酔い気分で、、旧中山道の追分宿跡を通り抜けると、追分神社があります。ことしはこの神社に寄ることにしました。その境内に芭蕉が詠んだ句の日があります。

ふき飛ばす 石も浅間の 野分かな

『更科紀行』の最後に載っているという、この句、古文の先生、矢持先生が解説してくださいました。

ネット情報などでずるをしてミニ解説をすると、貞享五年(1688)、美濃を出発、姥捨で月見後、善光寺を参拝した芭蕉が軽井沢を経由して江戸に戻る時、追分で 詠んだと言われている句だそうです。「野分」は秋の季語です。芭蕉はここで強い風に吹かれたのでしょう。そこで、一行はほろ酔い気分の指導教授の号令にしたがい、その時の芭蕉の気持ちになってポーズをとりました。

かくして、楽しくも、充実した2日間のゼミ旅行は無事終了しました。

さて、まもなく、秋学期、気分も新たにがんばろう!












    2014年9月3日水曜日

    2014年度明海大学浦安キャンパス学友会サマーキャンプに参加して

    201492日(火曜日)、3日(水曜日)に千葉県鴨川市の鴨川ホテル三日月で2014年度明海大学浦安キャンパス学友会サマーキャンプが開催されました。このキャンプは、学生部長ほか関係教職員が学生代表と協力して、企画・運営するものです。わたくしも昨年度に引き続き、今回もこのキャンプに参加しました。昨年度の報告については以下のページをご覧ください。キャンプの目的などについての記載もありますので、関心がおありの向きはご参照ください。
    http://otsuyukio.blogspot.jp/2013/9/blog-post.html

    キャンプの日程は昨年度とほとんど変わりありません。1日目は、開会式などの後、午後145分から5時までが分科会、630分から800分までが懇親会です。2日目は、朝食の後、午前9時30分から11時00分までが全体会で、分科会の報告があります。そのあと、11時30分までが閉会式という日程です。大部分の参加者は大学が用意したバスで大学・安房鴨川間を往復しました。帰路には、アウトレットなどに立ち寄るなどの観光オプションが3つ用意され、希望のオプションを選ぶようになっています。

    そうそう、今回は大学が未成年学生の飲酒追放を謳っているため、キャンプ全体が禁酒となりました。その意味で、きわめて健全なキャンプとなりました。

    キャンプの中心に位置づけられているのが分科会で、今回はつぎの4つのテーマが用意されました。
    1 授業・大学設備・学生と教職員の関わり方について
    2 明海大学の魅力、他大学との違いについて
    3 ボランティア活動について
    4 日本人学生と留学生の交流について

    テーマ別に16の班が用意され、それぞれの班に13人前後の学生、教職員、教育後援会・同窓会関係者が割り振られました。今年度は各班を3つの小グループに分け、それぞれのグループで討論するという形をとりました。さらに、今年度の新機軸として、ワークシートの配布がありました。これにより、各自の意見や討論の様子がより正確に記録されることになりました。

    わたくしは「授業・大学設備・学生と教職員の関わり方について」をテーマにした班の1つに加わりました。その班の中でわたくしたちのグループは学生2人(うち、1人は中国からの留学生)、教育後援会(保護者)1名、それにわたくしの4人でした。人数が少ない分、一人一人の意見をたくさん聞くことができました。ただ、グループごとの討論が終わった後、班としての全体討論の時間がなかったのが残念でした。

    2日目の全体会では各テーマ担当の代表が分科会での議論の報告をしました。統一されたデザインのパワーポイントを使い、どれもきわめて滑らかな発表でした。昨年度の報告と比べれば、その違いは明らかです。学友会の委員、参加学生の努力の賜物と高く評価したいと思います。

    ただし、改善すべき点もたくさんあります。多くはプレゼンテーションの仕方というよりも、議論に向かう姿勢とか、議論の仕方など、より本質的な点にかかわるものです。以下、そうしたいくつかの点を取り上げます。

    まず、議論に先立ち、上記の4つのテーマを選定した理由を明らかにしておく必要があります。また、個々のテーマについても、あらかじめ、どんなことをどう議論してほしいのかを述べておくほうが議論の拡散を防げます。これらの点については、開会式できちんと時間を割くべきだと思います。

    各分科会で討論された内容が与えられたテーマから逸脱していたということはないのですが、わたくしにはきわめて表面的な観察の羅列に終わっているように思えました。たとえば、設備の面でどんな問題があるかといったときに、「エレベータの台数が少なすぎる」とか、「学食の食事の質や店員の質が低い(たとえば、制服のまま、喫煙所で喫煙し、そのまま、厨房に戻る)」とかといった点が指摘されました。個々の指摘は貴重なものではありますが、せっかく、まとまった時間を取っての議論の場があるのですから、もう少し考えを進めて、どうしてそのような問題が生じるのか、その問題を解決するためにはどうしたらよいか、などについて考える必要があります。そう考える姿勢を習慣づけると、どんな問題に対してもじぶんのあたまで考えるようになります。

    また、ある問題に関して複数の指摘があった時に、単にそれを羅列するだけでなく、整理し、分類し、それらのもとにある根本的な問題を探るようにする必要があります。そんなむずかしいことは自分たちにはできないとあきらめてはだめです。人間であれば、だれでも考えることはできます。問題は考える習慣を持っているかどうかです。特別の才能がいるというわけではありません。一度、考える楽しみを覚えると、むしろ、考えないでいることがつらくなる、というよりも、できなくなります。やってみましょう。

    分科会ではいろいろなことが話し合われましたが、大学は基本的に学びのコミュニティーであるということを忘れてはならないと思います。教員と学生・院生が一体となって、探求し、学ぶ。それを職員が支援する。この点をないがしろにして、どんなに大学改革を叫んでもそれはむなしいだけです。

    ですから、「明海大学の魅力はなにか」「他の大学とどこが違うか」と問われたときに、いの一番に立地条件がよいという答えが出てくるのはどうかと思います。学びのコミュニティーとしてどんな魅力があるか。「学生・院生と教員の距離が近い」というのもよいのですが、それが会いたいときにいつでも会ってくれるというだけのものであれば、いささか疑問です。

    多くの大学教員は研究者としての顔と教育者としての顔を持っています。わたくしはいつも学生・院生に言うのですが、教育者としての大学教師は学生・院生が育てるという側面があります。学生・院生がなにも求めなければ、成長しない教員も少なくありません。日常的なことであれば、たとえば、声が小さく、かつ、マイクも使ってくれない教員がいたら、「聞こえません」というべきです。それでもその声に応えてくれないのであれば、同じ学科や学部の他の先生に相談するとよい。毎回、30分近く遅れて講義が始まり、30分近く早く講義が終わる教員がいて、学生・院生がおかしいと感じたら、それはそのことを教員に伝えるべきです。

    もう少し本質的なことで言えば、講義内容でわからないところ、疑問に思うところなどがあったら、発言しましょう。まともな教師であれば、それに真摯に応えようとします。そうした問いかけとそれに対する応答が大学にふさわしい緊張関係を生みます。

    わたくし自身はそのような緊張関係があることを明海大学の魅力としたいと思っています。それには教職員、学生・院生が一体となって努力しなくてはなりません。でも、そのような努力の後には自信に満ちた顔の学生・院生諸君がいるはずです。

    もう一点。これは全体会で指摘したことですが、なにか問題が認められたときに、それを外的な力によって解決しようとするのはよいことではありません。せいぜいそれは最後の手段としてとっておくべきです。たとえば、出席率が高くない授業があるので、授業では出席を取るべきだとか、さらには、教員間で出席の取り方を統一すべきだといった発想には組めません。

    日本人学生と留学生の交流があまりないからといって、授業で日本人学生と留学生が隣同士になるように席を決めるべきだというのも同じことです。それは「席を決める」という外的な力によって実現させるべきものではなく、自然にそのような状態が生み出されるべきものです。

    受講マナーが悪い学生がいる。それを注意しない教員がいるのはけしからん。「教員による注意」という外的な力によって問題を解決しようという発想です。もちろん、注意をすべきだと考える教員もいるでしょう。しかし、直接注意をするのではなく、そのマナーは改めるべきであると気づかせるという方法をとる教員もいます。体験的には、外からの力で強制されたことは自分自身で気づいて直したことに比べて定着率が低いように思います。

    などなど、いろいろなことを考えさせられた2日間でした。今回話し合われたテーマは多くの大学に共通する重要な問題です。その意味で、明海大学がこのような形で問題の解決を探る試みを重ねていることはとても大事なことなのです。