2013年9月4日水曜日

大学教員の新しい環境への適応

大東文化大学の靜哲人さんとはゆっくりと話したことはないのですが、おもしろい視点や考え方をお持ちなので、時々、ブログを拝見しています。
http://cherryshusband.blogspot.jp/2013/09/blog-post_3.html

けさ、靜さんのブログを閲覧しに行くと、こんなことが書いてありました。

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英語教育で名のある先生が、定年退職後に、それまでの職場より学生の学力の下限が低い大学に移り、その学生たちの学力の低さを嘆いている、というのを残念ながら時折耳にする。

言い換えれば、その学生たちには、その先生のそれまでの常識ややり方や実践が「通用しない」ということである。通用しないなら通用するように自分のほうで常識や手法を変える必要がある。
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これは英語教育の世界だけでなく、英語学や認知科学の世界でもよく見られることで、靜さんの書かれているとおり、問題です。

一般的に、定年退職後に別の大学に移籍した場合、つぎのような振る舞い型のタイプがあるように思います。

1 移籍先の大学でなにを目指すということもなく、専任職を得たということだけに意義を感じて、できるだけ何も起こらないことを目指して過ごすタイプ

2 移籍先の大学の問題点をただただ嘆き、前の大学はよかったと、昔を懐かしむタイプ

3 移籍先の大学で、新たな研究と教育の確立を目指し、努力を惜しまないタイプ

このほかに、学部長とか、学長とかという学内行政に勤しむタイプもありますが、それは上記の諸タイプとは質が違います。

わたくしも、この4月に前任校を定年で退職し、明海大学へやってきたわけですが、「新浦安日記」に書き綴っているように、3のタイプでありたいなと思っています。そのためには、《明海大学やその学生はすばらしい》と褒め称えるだけではだめです。言うことはきちんと言う必要があります。

これまでの体験で、明海の学部生の多くは英語の基礎力が不足しています。たとえば、単語が集まって句を作り、句が重なって文を作る。句にはその中心になる単語があり、その単語の性質が句全体の意味や文法的性質の決定に重要な役割を果たす、ということがわかっていない学生が多い。念のために付け加えれば、「句」だとか、「文法的性質」だとかという文法用語は知らなくてもよい。大切なのは概念です。

これだけではわかりにくいので、例を挙げましょう。[their mother]というまとまり、その中心になっているのはmotherという名詞です。3人称、単数、女性です。そこで、their motherというのは名詞句であり、意味するところは「彼(女)たちの母親」のことで、母親を指します。そして、their motherは3人称、単数ですから、たとえば、主語の位置にくれば、対応する動詞が現在形なら3単現の-sがつきます。また、代名詞で受ける時はshe-her-her-hersの系列が対応します。

これだけのことがまだ定着していない学生がけっこういる。そうなったら、 その定着を目指す必要があります。そこで、来年度の英語学概論では、たとえば、中学校の英語教科書を使って、英語学への誘いをするということをやってみたらどうかと考え始めました。そういう工夫を考えること自体、非常におもしろいことで、考え出すと止まらなくなってしまいます。




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